【バックキャストデザイン】
【はじめに|なぜバックキャストが必要なのか】
日本のモノづくりは、長年フォアキャスト型の設計思考に支えられてきました。
「今ある技術」を着実に積み上げていくことで、確実性と品質を担保してきた歴史があります。
しかし、社会課題が複雑化し、前例のない変化が続く今、“延長線上の発想”では限界が見えはじめています。
本当に必要なのは、未来に向かって“横っ飛び”すること。
異なる技術、視点、素材と掛け合わせることで、新たな“化学反応”を生む設計──それがバックキャストです。
フォアキャストが「過去からの予測」なら、バックキャストは「未来からの設計図」。
本稿ではその構造と実践方法を、具体例とともに紹介します。
【基礎知識|バックキャストデザインとは何か】
未来を起点にして“今”を逆算する思考法──それがバックキャストデザインです。
「こうありたい未来像」から振り返ることで、現在に必要なアクションを明確化します。
従来のフォアキャスト(予測的設計)が過去の延長線であるのに対し、バックキャストは“新しい起点”をつくる思考法です。
とくに社会課題の解決やゼロからの発想が求められる分野で強く有効です。
【設計への活用例】
- カーボンニュートラル社会の実現
- 資源循環型の製造プロセス設計
- 将来ニーズを想定した空間計画
- 医療・福祉分野の未病予防モデル構築
- DfAM(アディティブ製造設計)の前提設計
【構成方法|未来を描き、逆算する4ステップ】
- 理想未来の仮説構築:
目的や価値観からビジョンを設定。「10年後にどうありたいか」を描き出します。
- 社会・技術の整合性整理:
制度・文化・技術などの変化要因を分析し、必要な構造転換を明らかにします。
- 現時点のギャップを可視化:
理想像と現状の差を比較し、「今やるべきこと」の粒度を明確化します。
- 実行ロードマップの構築:
短期・中期・長期のフェーズに分けて課題とリソース配分を整理します。
【技術やノウハウ|設計における応用視点】
- ①DfAM設計との連動: 未来の機能要件を前提に3D設計精度を高める
- ②UX/空間構成への展開: 未来の生活行動を想定し体験設計を行う
- ③サーキュラーエコノミー設計: 解体・再利用を想定した設計への応用
- ④サービスプロトタイピング: 未来社会に対する実証試験の設計手法
- ⑤教育/カリキュラム設計: 「未来の学び」から逆算した教育デザイン
【共創アイデア|複数視点からの未来逆算】
- 地域課題からの共創: 住民と未来像を描くことで、UI/UX含む設計に落とし込む
- メーカー協働: 将来製品の在り方から逆算して研究・設備を設計
- 建築・インテリア構想: 未来の生活に合う空間改修/用途転換設計
- プロジェクションマッピング×観光: 「未来の残し方」から演出と導線を計画
- PoC設計と支援: 未来の使用環境を仮定した仕様検証による試作支援
【小話|“10年後の水族館”を想像する設計】
ある自治体から「地域の未来像を描く展示施設を」との依頼がありました。
当初は「魚を展示する水族館」でしたが、私たちは問いかけました。
「10年後の子どもたちは何を見て育つべきか?」と。
AIで予測した2050年の海の生態系を、ARとプロジェクションマッピングで体験可能に。
単なる水槽展示ではなく、未来を想像し、学ぶ体験型施設へと再設計しました。
結果、来場者数は3年で120%増加。
この「未来からの逆算」による設計が新たな観光資源を生み出しました。
【Primal Design.Laboの支援と実績】
PoC構築/DfAM設計/UX空間提案/地域共創プロジェクトなど、
私たちはバックキャスト思考を起点としたデザイン支援を提供しています。
今ある技術をなぞるのではなく、「未来から考える設計」が成果を変える──
その実感を、ぜひ共に体験しませんか?
ご相談はお気軽にご連絡ください。