ウェアラブルデザイン

 

【ウェアラブルデザインの歴史】


身体に装着する道具の始まりは、


松葉杖や眼鏡などの補助具から始まりました。


中世には鉄製の義手・義足も登場し、


軍事や労働復帰を支える目的で進化します。


単なる支援器具でなく、尊厳の象徴でもありました。


20世紀に入り、樹脂や繊維素材の発展により、


装具は軽量化・高耐久化の進展を遂げます。


戦争や事故により補助具の需要は急増し、


「再び歩く」「働く」ための社会的技術へ。


復帰を支える“生きる装備”となりました。


1970年代以降は生体力学が導入され、


人体に精密にフィットする設計が進化。


一人ひとりの身体に寄り添う補装具が


個別対応可能な「オーダーデザイン」へ。


医療と工学の融合が進んだ時代です。


近年は3DプリンティングやIoT技術により、


個々に最適化された装着具が実現可能に。


センサーやAIを搭載することで、


装着者の動きや生体情報とも連動します。


“機能拡張する身体”のような存在へ。


ウェアラブルは医療領域から日常生活へ、


さらにはファッションや表現の手段へ拡張。


補助具に「美」を与えるデザインが生まれ、


ユーザーの個性や価値観も反映されます。


見せる道具=語るデバイスとなりつつあります。


今やウェアラブルは社会の“多様性”を映す鏡。


性別、年齢、障がいを超えた製品設計が求められ、


技術・素材・文化・思想が交錯する分野に。


人と共に“生きる”デザインが進化し続けています。



【背景と進化の流れ】


義肢や補助具は古代から存在し、


木製・布製を経て金属製へと進化。


産業革命期には大量生産が始まり、


軍事用義肢も技術発展を後押し。


20世紀後半には生体力学が導入され、


素材と設計の進歩により快適性向上。


「治療具」から「暮らしの道具」へ、


生活に溶け込む製品へと変化しました。


【現代社会における必要性】


高齢化が進むなかで装具の需要が増加。


障害のある方の社会参加も拡大し、


医療現場では個別対応が求められます。


作業支援やスポーツ補助用途にも広がり、


用途は医療福祉の枠を超えて多様化。


装着者のQOL(生活の質)向上の観点から、


現代では欠かせない技術の一つとなり、


持続可能な社会づくりとも結びつきます。



【義肢装具の市場動向と展望】


世界の義肢装具市場は2022年時点で、


約70億ドル規模に達しています。


今後も年5〜7%の成長が見込まれ、


2028年には100億ドル超の予測。


主因は高齢化と医療技術の発展です。


日本市場は約300〜400億円の規模。


高齢化と福祉需要により伸長を続け、


軽量化・高機能化・個別化が進行中。


用途はスポーツ、工場作業支援まで拡大。


エクソスーツやパワーアシスト装具など、


次世代の装具も市場に登場しています。


ウェアラブル分野全体の成長をけん引し、


多用途・多分野展開が今後の鍵となります。



【需要と活用の現場】


義肢や矯正具による日常生活の支援から、


高齢者や介助者を対象とした支援装具まで。


リハビリ施設や病院でも活用が進んでおり、


運動療法や術後回復支援に応用されています。


作業補助用エクソスーツも産業分野で普及。


さらにペット用補助具など用途は拡大中で、


“身体を支える装着具”の可能性が広がります。



【ペット用ウェアラブル装具】


高齢・疾患・けがによる歩行困難なペットに、


犬や猫の義足・車椅子などの補助具が登場。


関節サポーターや皮膚保護のウェアも実用化。


3Dプリンタ技術で個体に合わせた設計が可能、


軽量かつ柔軟な素材により負担も軽減されます。


装着ストレスや拒否反応を避ける工夫が重要で、


短時間から慣らす段階的な使用が推奨されます。


飼い主が手入れしやすい構造も評価されており、


獣医師監修の製品開発が理想的な形です。


ペットのQOL向上を実現する技術分野です。



【企業向け作業支援装具(エクソスーツ)】


製造・物流現場での重作業負荷を軽減するため、


エクソスーツが現場導入され始めています。


腰・肩・腕の動きをサポートする構造が主流で、


空圧・バネ・電動モーターによる支援方式あり。


労災予防・疲労軽減・人材定着が導入の目的です。


非電動の受動型スーツも導入実績が多数あり、


作業時間や動作内容に応じて最適設計が求められ、


作業着との干渉や着脱手順も改善点として重要。


導入効果の“見える化”やROI評価も重視され、


大手製造業・倉庫業を中心に普及が進んでいます。


軽量・高耐久な素材選定とコスト最適化が鍵です。



【その他のウェアラブル装具の用途例】


●【子ども向け補助装具】


成長に対応する可変構造を取り入れ、


遊びや学習を妨げない設計が重視されます。


明るく柔らかい色調やデザインにより、


装着への心理的ハードルを軽減します。


教育・療育と両立できる装具が求められます。



●【リハビリ・医療支援装具】


動作の誘導や関節の固定を目的として、


膝・足首・手首などの支援具が中心です。


近年は動作センサーと連携した製品も登場し、


リアルタイムでデータを取得しながら、


リハビリ成果の可視化に貢献しています。



●【スポーツ・トレーニング装具】


パフォーマンス向上や怪我予防の目的で、


筋肉・関節をサポートする補助具が進化。


従来のテーピング代替として使われるほか、


動作解析と連動したIoT装具も増えています。


競技者の習慣化・効果検証にも役立ちます。



●【ファッション/アート装具】


義手・義足を身体の延長として捉えるのではなく、


「魅せる装具」「表現する装具」へ進化中。


アーティストやデザイナーとの協業により、


装着者の価値観や美意識を可視化する分野です。


自己表現ツールとして国際的に注目されています。


【ウェアラブルデザインの今後】


医療・補助の枠を超えたウェアラブル装具は、


人々の生活スタイルや価値観に深く関与します。


装具は「働き方」や「個性」を支える存在となり、


社会との接点として重要性を増しています。


今後はIoTや感性設計との融合が発展の鍵です。



【ウェアラブルの効果とは】



  • 身体負担や慢性的な痛みの軽減

  • 動作補助による自立支援と生活の質向上

  • リハビリ効果の強化と早期回復の促進

  • 社会参加や職場復帰への心理的後押し

  • 安心感や自信を生むデザインと装着感



【課題と乗り越えるポイント】



  • 装着時の違和感や痛みの軽減対策

  • 軽量性と必要強度のバランス設計

  • コストと材料選定の適正判断

  • 製造精度とフィッティングの正確性

  • 生活動線や服装との干渉の最小化


→ 対話型設計や3Dプリンタ活用により、


個別最適化と試作反復が効率的に進行。


使用者参加型のプロセスが成功の鍵です。



【規模による開発期間目安】



  • ●個人試作(装具1点)…約1〜3ヶ月

  • ●動物用装具も同等規模で対応可能

  • ●量産モデル…開発〜生産で6ヶ月〜1年

  • ●医療機器として申請を含む場合…2年以上


※用途・精度・規制要件により変動します



■開発フロー



【ニーズと目的のヒアリング】


使用者本人や家族、医療関係者への聞き取り。


生活環境・動作の困りごと・目的を整理。


装着箇所・装着時間・作業内容を明確化し、


移動手段や補装具費制度の適用可否も確認。


日常動作とその妨げになる要因を抽出します。



【身体情報の取得と分析】


採寸や3Dスキャンで身体の正確な形状を取得。


装着部位や断端の状態、痛みや可動域も記録。


歩行や動作の観察には動画・センサーを活用。


負荷が加わる方向や接触点の分析も重要です。


姿勢・動線を加味し、設計指標を数値化します。



【コンセプト設計と方向性決定】


使用目的・生活環境・装着美を総合的に検討。


装着方法・強度・柔軟性などの要件を整理。


構造や素材候補を仮設計し、モデルを共有。


使用者との対話を重ね、設計イメージを統一。


使いやすさと意匠性の両立が求められます。



【3D CADによる設計・デザイン】


3D CADで装具の正確な形状をモデリングし、


身体形状に密着する構造を重視して設計。


負荷がかかる部分には補強リブを設置し、


厚み・曲率・締結方法なども事前に定義。


必要に応じてFEM解析で応力分布を検証します。


【試作と素材の検証】


FDMやSLA方式の3Dプリンタで試作品を作成。


軽量素材・柔軟素材の適合性を比較検討。


可動部・締結部の動作確認と耐久性の評価、


肌に触れる部位の違和感や通気性を確認。


試着後に使用者や専門職の評価を取得します。



【評価とフィードバック整理】


実際の使用環境での装着テストを実施。


装着時の痛み・ズレ・重さ・安定性を確認。


見た目や脱着しやすさなども評価対象に。


複数構造案を比較し、使用者の反応を記録。


医師・装具士の所見を反映し改善点を整理。



【改良設計と再試作】


フィードバックを元に設計を再検討。


形状調整・材料変更・厚みの再設定を行い、


締結方法を磁力式やワンタッチ式に変更。


パーツの交換性向上など細部も調整可能。


再試作→再評価のプロセスを繰り返します。



【最終仕上げと納品前対応】


色味・表面処理・角取りなどを微調整。


パッド追加や抗菌加工も施し安全性を強化。


完成品に近い形で最終フィッティング実施。


補装具申請書・意見書作成の支援も対応可。


長期使用を想定したメンテナンス性も検証。



【導入支援とアフターケア】


納品後に装着方法・使用時の注意を説明。


生活動線に応じた不具合を定期確認します。


違和感・破損・摩耗には迅速に対応可能。


使用者の体調や環境変化に応じた調整支援。


半年〜1年に一度の再評価を推奨します。



【製品化・制度対応を行う場合】


薬機法・JIS等の法制度に適合が必要な場合、


製造責任体制とPL法対応を整備する必要有。


厚労省・PMDAへの届出や試験支援も可能。


海外市場ではCE・FDAなどの認証が必要です。


臨床使用には第三者評価や試験が求められます。



【開発期間と費用の目安】


●個人試作…約1〜3ヶ月


●改良・量産前提…3〜6ヶ月程度


●試作1点あたり…10万〜30万円が一般的


●製品化(制度対応含む)…100万円超も想定


素材選定・設計精度・申請要否により変動大



【対象となる助成金・補助金】


●中小企業庁「ものづくり補助金」


中小企業等による製品開発・試作・量産準備を支援。


IoT・福祉機器などの装具開発も対象となる場合あり。


  • ※法人格・開発内容・革新性の要件を満たす必要。


●東京都「新製品・新技術開発助成」


都内に本店を持つ中小企業の技術開発費を助成。


3Dプリンタ・福祉装具などの開発も対象実績あり。


  • ※開発費の2/3以内、上限1500万円、1年9か月以内。


●NEDO「福祉用具・介護支援技術」


高齢者・障害者のQOL向上に資する技術開発が対象。


医療・介護分野の装具やリハビリ機器の開発に最適。


  • ※研究機関との連携・実証体制が求められる。


●厚労省「自立支援機器開発補助金」


福祉用具の研究・実証・市場化までを段階支援。


装着型支援具(義肢・装具など)も申請実績多数。


  • ※補装具費制度との連携があると優位性が高まる。


●民間助成(例:トヨタ財団、キヤノン財団)


共生社会・身体性・地域福祉などがテーマの助成枠。


社会的意義や利用者視点が重視される傾向にある。


  • ※企業単体での申請不可なケースもあるため確認必須。


【補足】


いずれの制度も、助成金交付のためには


「社会的意義」「実施体制」「開発計画」など、


明確な事業構想と書類準備が必要です。


専門家(中小企業診断士・支援機関)との連携や、


実証先(医療機関・福祉施設)との協力体制があると、


審査通過の可能性が大きく高まります。


【実用化に向けた連携のすすめ】



  • ●義肢装具士や専門医と連携し設計を最適化

    → 装着性・耐久性に関する専門的な意見を反映。

    臨床現場の経験が、現実的な構造選定を支えます。


  • ●介護・福祉現場の声を開発初期から反映

    → 実使用に即した設計が可能になり、

    想定外の使われ方や課題を事前に把握できます。


  • ●使用者との対話型プロトタイピングを実施

    → 生活動線や装着感への意見を設計に反映し、

    「共につくる装具」が完成度と満足度を高めます。


  • ●設計→試作→評価→改良の反復開発を実施

    → 短サイクルの試行錯誤が品質向上の鍵。

    細かな違和感も設計改善につながります。


  • ●用途拡張を見据えた実証・モニター評価

    → 介護・教育・作業支援など多様な現場で試用。

    客観的評価で実装への信頼性を高められます。



【用語解説】



  • ●義肢装具士
    義手や義足、装具の設計・製作・調整を行う専門職。
    医師の指示のもと、患者に最適な装具を提供します。


  • ●補装具費制度
    障害者や高齢者の装具購入に国や自治体が費用補助。
    条件により、自己負担を抑えて装具導入が可能です。


  • ●3D CAD(スリーディーキャド)
    コンピュータ上で立体設計を行う設計支援ソフト。
    正確な形状・寸法・構造設計に広く用いられます。


  • ●FEM解析(有限要素法解析)
    材料にかかる力や変形をシミュレーションする技術。
    装具の強度や安全性を事前に評価するために活用。


  • ●FDM/SLA
    3Dプリンタの出力方式の違い。
    FDM:溶融樹脂を積層、SLA:光硬化樹脂で造形。


  • ●対話型プロトタイピング
    使用者と対話しながら設計と試作を進める開発手法。
    実体験に基づく意見を設計に直接反映できます。


  • ●エクソスーツ
    人間の動作を補助する外骨格型の装着装置。
    作業・介護・リハビリなどに応用されています。


  • ●IoT(モノのインターネット)
    装置や機器がネット接続し情報をやりとりする仕組み。
    ウェアラブル装具にセンサー連携を加える技術基盤。


  • ●薬機法(旧薬事法)
    医療機器や装具などの品質・安全性を規定する法律。
    医療用装具を販売するには適合審査が必要です。


  • ●PL法(製造物責任法)
    製品欠陥で被害が出た場合のメーカー責任を定めた法律。
    装具の製品化時にはリスク評価と体制整備が重要です。


  • ●PMDA
    厚生労働省管轄の医薬品医療機器総合機構。
    医療機器の審査や承認申請の受付・支援を担います。


  • ●JIS規格
    日本産業規格。一定の安全性・機能・品質を保証する基準。
    装具が工業製品として適合するために準拠が求められる場合があります。


  • ●補助金/助成金
    政府や自治体、財団が研究・開発・導入を支援する制度。
    条件を満たせば返済不要で事業資金の一部に充てられます。



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