【はじめに|空間は“読む”ものでもある】
空間は、ただ「設計するもの」ではありません。
実は「読み解くもの」でもあります。
人の感覚や記憶、体の動きに働きかける空間は、
無意識のうちに行動や気持ちに影響を与えています。
この章では、空間を「読む力」を高めるための
見方や考え方をわかりやすく整理していきます。
【1|空間を形づくる3つの要素】
空間は主に「形」「光」「素材」でできています。
この3つは別々ではなく、互いに関係しあっています。
●形(かたち):壁や床、家具のような構造や配置
→ 人の動きや視線を自然に導きます。
●光:太陽光や照明、反射などによる明るさや影
→ 空間に奥行きや印象の変化を生み出します。
●素材:木や石、布などの質感や音、触り心地
→ 見た目だけでなく、体感や記憶にも残ります。
これらの「配置」や「違い」によって、
空間に意味や感情が生まれてきます。
【2|スケール感とバランスのとり方】
空間の広さや高さは、数字よりも体で感じるものです。
●スケール感:人の体との関係で空間を感じる感覚
→ 1.5mの壁は「包まれている」と感じやすく、
3mの天井は「広がり」を感じさせます。
●バランス(プロポーション):形どうしの比率
→ 窓と壁の割合や、天井と床の距離など、
心地よさにつながる比のバランスがあります。
心に響く空間には、こうした「大きさの感覚」と
「整ったバランス」が必ず関係しています。
【3|人の動きと視線を考える】
空間の設計では「どう動いてほしいか」も大切です。
●動線:人が歩いたり移動したりするルート
→ 真っ直ぐなのか、曲がるのか、立ち止まるのか。
動線の設計で空間の使い方が変わります。
●視線:人がどこに目を向けるかという流れ
→ 視線を集めたい場所に、光や形で焦点を作る。
動きと視線が自然につながるような構成があると、
空間の印象が心地よく、使いやすくなります。
【4|空間は時間とともに変わる】
空間は1日中、同じではありません。
●光の変化:朝・昼・夕で日差しが変わる
→ 光と影の移ろいが、空間の印象を変化させます。
●人の流れ:時間帯で使われ方が変わる
→ 駅や商業施設などは朝と夜で機能が異なります。
●季節や温度:夏と冬で快適な空間は変わる
→ 窓の位置や素材の選び方で、快適さを調整できます。
時間に寄り添って設計された空間は、
長く使われ、愛される場所になります。
【5|空間が与える気持ちの影響】
空間は、人の気分や行動にも関係しています。
●安心する空間:囲まれ感、柔らかな素材や光
●緊張する空間:高い天井、影の多い空間、直線的な形
●開放的な空間:視界が抜けて、明るく、広く感じる
このように空間には「気持ちに作用する力」があり、
それを意識してデザインすることがとても大切です。
【まとめ|空間を読む力を育てる】
空間を読むとは、単に見た目を見るのではなく、
そこにいる人の感じ方や動き方まで読み解くことです。
大きさや形、光や素材、時間の流れや気持ちの変化。
それらを観察して理解し、設計に活かしていくことで、
空間は「意味のある場所」へと変わっていきます。
【空間を届けるという仕事】
私たちPrimal Design.Laboは、
こうした空間の“見えない力”を、
設計や製作のプロセスに
丁寧に組み込んでいくことを大切にしています。
ただ配置するのではなく、
「そこにいる人がどう感じるか」
「何を体験するか」を想像し、
形・光・素材に意味をもたせながら、
空間をつくり上げます。
空間は、誰かの記憶や行動、未来の価値に関わるもの。
それを信じて、設計し、実現することが、私たちの仕事です。