【価値を生む空間とその共創手法】
― 空間を社会とつなぐための実践戦略 ―
【はじめに|空間の意味は“社会との接点”に宿る】
空間は人のためにある──それは当然のようでいて、
実はとても繊細なバランスの上に成り立っています。
使いやすさだけではなく、そこに“どんな意味”があるか。
空間が社会とどうつながり、どんな価値を生むかを
考えることは、設計者にとって大切な姿勢です。
この章では、空間を単なる「器」にとどめず、
体験・事業・社会貢献へと拡張していくための
戦略的かつ実践的な手法を整理していきます。
【1|デジタル技術と模型による空間検証】
設計における仮説や感覚を検証する手段として、
デジタル技術の活用は欠かせません。
●VR(バーチャルリアリティ)による体験検証
・完成前の空間をリアルに体感できる
・視線の流れ、圧迫感、動線を仮想的に確認
●人流分析による定量的評価
・センサーやカメラで滞在時間や流れを把握
・混雑状況や行動パターンを可視化
●模型・ジオラマによる俯瞰的理解
・施設全体の構造を立体的に把握できる
・都市や複合施設など大規模案件では効果大
・展示やプレゼンでの共有に優れ、
多様な関係者と空間理解を共有可能
●展示物や模型にセンサーを内蔵した拡張活用
・模型内部に人流センサーやレーダーを組み込み、
動線や混雑検知だけでなく、防犯・防災用途にも展開
・施設の安全性や運用状況を可視化する“生きた展示”へ
●プロジェクションマッピングの活用
・天井・床・壁など建築の一部を映像演出に変換
・時間帯やイベントに応じた空間演出を可能に
・教育施設や医療・福祉空間でも活用が広がる
●デジタルサイネージと空間演出
・情報表示から、感情に訴える演出媒体へ進化
・立体視・AIキャラクターとの連動など技術的表現が増加
・だからこそ、洗練された空間設計との融合が求められる
こうした技術が乱雑に並ぶのではなく、
空間の設計思想と丁寧に調和していることこそ、
成熟した都市や施設にふさわしい空間づくりだと考えます。
Primal Design.Laboでは、こうしたメディア演出も
「体験の質」として計画に組み込んでいます。
多角的な検証方法と空間メディアの統合により、
「なんとなく」ではない根拠ある設計判断が可能になります。
【2|空間とブランド体験設計】
空間は、ブランドを体験させる「媒体」にもなります。
●ブランド価値の“翻訳”としての空間
・ロゴや商品だけでなく、場そのものに意味を宿す
・理念やストーリーを、構成・素材・光に変換
●五感による印象形成
・香りや音楽、温度や触感までも含めた演出
・照明計画や動線構成による“体験の設計”
●一貫性と記憶への残り方
・店舗・展示・施設などに共通の空間軸をもたせる
・来訪者の記憶に“その空間らしさ”が刻まれる
空間を介して、ブランドの世界観が人に伝わる──
その設計力が、企業価値にも直結します。
【3|PoC・共創型空間開発】
空間づくりを成功に導く鍵は、「共創」にあります。
●PoC(概念実証)から始める
・まずは簡易的に小さな空間で検証を行う
・設計案が実際に機能するかを現場で確認
●利用者との対話型開発
・使う人の声を反映し、修正と改善を重ねる
・使われ方の“発見”が設計の質を高める
●多様なステークホルダーとの連携
・行政・企業・地域住民などと連携して設計
・目的を共有し、社会的価値のある空間を実現
共創とは、設計者だけが考えるのではなく、
関わる人すべてで「空間を育てる」姿勢です。
【4|投資視点とROIへの対応】
空間づくりには、必ず“コスト”が伴います。
●ROI(投資対効果)という視点
・投入した費用が、どのように価値として回収されるか
・売上/ブランド認知/来訪者数などに反映
●空間の“持続性”という投資効果
・設計の柔軟性や保守性が運用コストに影響
・一度作って終わりではなく、長期価値を想定する
●成果の“見える化”による説得力
・人流データや感想アンケートの可視化
・パートナーや出資者への納得性を生む資料作成
空間は、感性と同時に“資本の器”でもあります。
経営や社会的使命ともつながる、
戦略性ある設計が求められます。
【小話|大学図書館の小さな改修から生まれた共創】
ある大学では、図書館の一角を「対話の場」に改修。
もともと静寂を重んじていた空間に、
あえて声が出せるブースを設け、間接照明と布素材で
柔らかく仕切られた小エリアを試験導入しました。
学生たちは最初、戸惑いながらも使い始め、
やがてグループワークや休憩の空間として定着。
「静けさ」と「対話」のバランスを設計したことで、
学びと出会いの両立が実現したのです。
このように、空間は「試して、育てる」ことで
社会や人とのつながりを深めていけます。
【Primal Design.Laboの空間提案について】
私たちPrimal Design.Laboは、
空間を「体験」「事業」「関係性の起点」ととらえ、
クライアントやユーザーとともに、
意味のある空間づくりを実現しています。
設計図に落とし込むだけでなく、
VRによる体験設計、PoCによる現場検証、
ステークホルダーとの共創計画まで一貫対応。
空間が社会とつながり、価値を生み出すための
パートナーとして、ぜひ一度ご相談ください。