― 設計と現場をつなぐ「ものづくりの本番力」 ―
【はじめに|図面と現場のギャップを越える】
設計図は完成していても、現場で形にならない。
そんな「設計と施工の断絶」は、いまだ多くの
現場で起きています。仕上がり精度の低下、再
施工によるコスト増、顧客満足度の低下など──
その課題を解消するのが「実装連携設計」です。
【この記事の構成について】
この記事では「施工技術・実装連携設計」を中核
テーマに、基礎知識から実装プロセスまでを網羅。
設計段階から施工性・実装性を考慮した連携設計
のあり方を、中分類ごとに丁寧に解説します。
【中分類項目】
・納まり設計(ディテール設計)
・施工図作成(加工・製作図含む)
・現場調整(現地実測・据付対応)
・取合い検討(異工種間の干渉確認)
・アンカー・固定方法設計
・建築基準との整合性確保
・モックアップ・仮設検証設計
・工程計画と現場連携設計
・施主・施工業者との調整設計
・BIM連携と施工干渉解析(Clash Check)
【納まり設計|ミリ単位の現場設計】
設計図で“線”だった部分を“詳細な形”に変換。
仕上材の厚み、目地の幅、部材の重なりなど、
現実の素材で美しく収まるよう検討します。
「現場に丸投げ」ではなく「図面で寄り添う」
姿勢が、完成度に直結します。
【施工図作成|製作現場を導く設計】
現場や工場で部品を製作するための加工図や、
据付手順まで記載された施工図の作成は、
設計者と現場をつなぐ「言葉」の役割を担います。
曖昧な図面では精度が出ず、手戻りが発生します。
図面を“意思伝達”として設計する力が求められます。
【現場調整|据付のリアルを掴む】
どれだけ設計しても、現場には“ゆらぎ”がある。
躯体の微妙な傾きや、寸法誤差を吸収するため、
現地実測に基づく調整が不可欠です。
その場で判断せず、事前に吸収設計しておくことで、
リスクとコストを大きく抑えられます。
【取合い検討|異種の交差点を制す】
設備、構造、意匠──異なる設計思想の交点には
「取合い」が生じます。ダクトと天井、柱と什器、
配線と床材など。図面上で見えない干渉を
事前に検知し、構造と意匠の両立を設計します。
【アンカー設計|固定の信頼性を支える】
重量物の据付、構造物の連結では、
コンクリートへのアンカーや、鉄骨への溶接部など、
見えない「固定方法」こそ品質の根幹です。
許容荷重、耐久性、施工性を見極めたうえで
選定・指示する必要があります。
【法規整合|基準と創造のバランス設計】
構造強度、内装制限、防火性能など、
建築基準法や各種法規との整合は必須。
ただ守るだけでなく、設計の意図を実現しつつ
法に適合させる「創造と制約の両立」が要です。
【モックアップ設計|試作で“納得”を得る】
顧客・現場との認識を合わせる手段として、
部分モックアップや仮設体での検証は有効です。
机上の理屈では見えない「感覚」「使い勝手」
を共有し、微調整を重ねることで満足度が高まります。
【工程設計|施工順と安全性への配慮】
いくら理想的な設計でも、施工工程が破綻すれば
現場は混乱します。「何をいつ、誰が、どこに」
という工程視点を取り入れ、構造・設備・意匠の
施工順と共存を前提とした図面が求められます。
【BIMと施工干渉|デジタル連携設計】
BIM(Building Information Modeling)を用いれば
立体的に干渉を確認でき、施工者との情報共有も
飛躍的に向上します。Clash Checkにより
配管・梁・パネル等の干渉を事前に排除できます。
【施工連携設計の要点|言語と空間の翻訳】
・図面は現場言語に翻訳するもの
・納まりは現場の“収まり”を想像すること
・法規と創造の交差点に、設計の美がある
・現場調整は段取り力と想像力の勝負
・図面の1mmは、現場の10分を救う
【用語解説】
・納まり:仕上材同士の継ぎ目や重なり方のこと。
・取合い:異なる設計要素が接する部分の調整箇所。
・アンカー:構造物を固定するための留め具や金物。
・施工図:現場で使う具体的な加工・設置用図面。
・BIM:建築情報を3Dモデルで統合する設計手法。
【小話|“祈りの光”をつくる3Dプリントの壁】
ある地方の小さな教会からの相談だった。
「老朽化したステンドグラスを、雰囲気は残しながら、
安全かつ現実的な方法で置き換えたい」
かつてのガラス工房は閉業しており、予算も限られる。
ただ、信者の方々にとって、その光は
“祈りの象徴”でもあった。
私たちは考えた。
「ガラスじゃなくても、“光を透す壁”は作れる」
構造設計から素材選定まで練り直し、
最終的に提案したのは──
ポリゴン調の壁面全体を、3Dプリンターで造形し、
透過部にエポキシ樹脂を流し込んだ“レジンアート”壁。
色彩は、透明~半透明の樹脂に顔料を混ぜ、
光を通す角度まで試作で調整。
パネル同士の継ぎ目は、ポリゴン構造により
意匠として昇華されている。
取り付け時もボルトと一体化した設計で、
裏からの簡易固定が可能な構造にした。
元のステンドグラス工法で換算すると、
1000万円超の見積が出る規模だった。
しかしこの3Dプリント+樹脂構成により、
製作・設置を合わせて400万円台まで圧縮。
しかも一部は教会内の信者さんと一緒に
塗装や注型体験を行い、“自分たちの祈りの壁”を
手でつくるワークショップへと昇華できた。
竣工当日。
午後の斜め光が、ポリゴンの面をすり抜け、
壁面に七色の影を落とした。
それを見て、神父がぽつりと言った。
「この光は、昔より少し“やさしい”ですね」
きっと、祈りは素材じゃなくて、
“重ねられた手”に宿るのだと思った。
【締めくくり|設計と施工をつなぐパートナー】
Primal Design.Labo合同会社は、設計から施工まで
「図面が現場で使われる」ことを主眼においた
連携設計を得意としています。
什器や装飾、設備外装、インテリア構成など、
建築と工業設計の交差点にある案件を多く手がけ、
BIM・モックアップ・製作図の連携にも柔軟対応。
PoCから実装設計まで、設計と現場の“翻訳者”
として、お客様と現場をつなぎます。
“形になる設計”をご検討の方は、ぜひ一度
ご相談ください。