近年、画像や簡易操作から3D形状を生成する「3Dデータ自動生成AI」が急速に普及しています。
検討スピードを上げる技術として強力であり、試作やビジュアル用途では大きな価値を持ちます。
そして実は、PrimLoopの開発起源も「3DCADデータの一次生成」にあります。
画像、スカルプト、音声など多様な入力から3DCADデータを一次生成することを目標に、
開発はスタートしました。
つまり出発点の目的は、ある種同じでした。
それでもPrimLoopが「構築AI」として再定義され、別の道を選んだのは、
産業用途で“使える形”にするために必要な前提が異なるからです。
同じ「3Dが出る」でも、決定的に違うのはプロセスです
3Dデータ自動生成AIは、入力(画像や操作履歴など)から形状を推定し、
短時間で3Dを出力します。ここでの主価値は「形を出す速さ」にあります。
一方、PrimLoopは「3Dを出すこと」自体をゴールにしません。
3Dはあくまで結果であり、その前に
前提・要件・制約・判断理由を構造として整え、
その構造に沿って検証を回しながら構築していきます。
重要なのは、見た目の出力ではなく、
どのように到達したのかと
変更・再利用できる形で残るのかです。
3DCADの自動化が進むと、産業はどう変わるのか
3DCAD生成が当たり前になれば、「形を作るコスト」は大幅に下がります。
その結果、設計・製造・建築・医療など多くの領域で、
ワークフローそのものが更新される可能性があります。
- 試作の民主化:小規模チームでも検討回数が増え、意思決定が速くなる
- 設計の前倒し:企画段階から3D検討が標準化し、手戻りが減る
- 製造との接続:3DプリントやCAM、見積・調達へ早期に連結できる
- 仕事の再配分:「作図中心」から「条件整理・判断中心」へ役割が移る
これは単なるツール改善ではなく、設計の産業革命が起き得る領域です。
ただし、産業用途での利用価値は限定的になりやすい
産業用途では、単に「それっぽい形」が出るだけでは不十分です。
必要なのは次の要素です。
- 説明可能性:なぜその形なのか、根拠を説明できる
- 変更耐性:条件が変わったときに影響範囲を追跡できる
- 制約整合:製造・法規・安全・現場条件と矛盾しない
- 再利用性:次の案件に転用できる「知識」として残る
ここが満たされないと、適用範囲はどうしても限定的になります。
これは性能の問題というより、扱っている情報の種類が違うためです。
図面や設計データをアップロードするのは、非常に危険です
産業用途で最も慎重になるべき点は、
設計データそのものが資産であり機密だということです。
図面やCADデータには、製品仕様・コスト構造・製造ノウハウ・顧客要件など、
事業の中核情報が含まれます。
そのため、外部AIに図面や設計データをアップロードする行為は、
情報漏洩・知財流出・契約違反のリスクを伴います。
これは「便利さ」と引き換えにできる問題ではありません。
PrimLoopはオンプレミス設計も前提としています
PrimLoopでは、この前提を重く受け止め、
オンプレミス環境での運用設計も含めて構築しています。
オンプレミス設計とは、設計データや判断構造を外部に出さず、
自社・自組織の管理下に置いたままAIを運用する考え方です。
これは単なるセキュリティ対策ではなく、
産業用途で設計データを扱うための必須条件だと考えています。
多くの3Dデータ生成AIは「STLで止まる」
現在普及している3Dデータ自動生成AIの多くは、出力形式として STL を採用しています。
STLは最終形状を表すフォーマットであり、設計意図・履歴・パラメータを持ちません。
- 後から編集しにくい
- 条件変更に弱い
- 解析・検証・流用が難しい
そのため、産業用途では「便利だが使いどころが限られる」という状態になりやすくなります。
PrimLoopはSTEP/Parasolidなど中間拡張子での出力を前提にします
PrimLoopは、生成で終わらせず、
STEP、Parasolidなどの中間拡張子での出力を前提としています。
これは「その後の編集・検証・再設計」を現実に成立させるためです。
3Dは「完成品」ではなく、
判断を裏付け、更新し続けるためのデータとして扱われます。
そのため、構造解析や干渉検証などの工程へ自然に接続できる設計を重視しています。
使用者の癖や自社ルールをカタログとして記憶する
さらにPrimLoopでは、単に形を生成するのではなく、
設計者ごとの判断傾向や自社ルール・設計基準を
カタログとして記憶していきます。
これにより、自社にあった3DCADデータの自動化だけでなく、
その先の解析・検証までを同一ループで回すことも実現可能になります。
非技術者も「工学的安定性」を踏まえた構築に参加できる世界へ
PrimLoopが目指すのは、技術者だけのためのAIではありません。
事務職や営業職、現場担当者など、
必ずしもCAD設計や作図、絵が描けない人でも、
工学的な安定性を踏まえた「構築」に参加できることを重視しています。
なぜなら、実需や課題、そして「こういうのがあったらいいのに」という発想は、
現場から生まれることが多いからです。
その声を、設計検討に耐える形へ落とし込める仕組みが必要です。
属人性を排除しつつ、最終判断は専門職の「人の手」で行う
PrimLoopは、属人性の排除を目標に掲げています。
ここでいう属人性とは、「誰か一人の頭の中にしか存在しない判断」です。
PrimLoopは、前提・要件・制約・判断理由を構造として残し、
組織で共有・再利用できる形に変換します。
ただし、PrimLoopは完全自動完結型ではありません。
安全性・責任・説明可能性の観点から、
最終の意思決定は技術職・専門職の「人の手」による決定を必須とします。
これは制限ではなく、産業用途で成立させるための設計思想です。
結論:PrimLoopは「生成AI」ではなく「構築AI」です
PrimLoopは、3DCAD一次生成を起点に開発が始まりました。
しかし産業用途を見据えた結果、
必要なのは「速く形を出すこと」ではなく、
判断を安全に、共有可能に、再利用できる形で残すことだと整理しました。
だからPrimLoopは、3Dデータ自動生成AIと同じ場所で精度競争をするのではなく、
産業で扱える運用・セキュリティ・説明可能性を前提とした
構築AI基盤として設計されています。